救いは月の彼方から








 静寂の中、カチ、カチ、カチ、と秒針が動く音がする。

 【遠野家】の居間の柔らかい椅子に光沢あるテーブルを挟み、漆黒の長髪の少女と空色の髪の少女が向かい合って座っている。秋葉とシエルだ。

 秋葉は髪を梳かし(ながら、鋭い眼を何時になく締まった表情のシエルに刺す。

「もう一度云って貰えますか? 先輩」

 表裏を見抜くつもりの秋葉の眼を正面から受け、シエルは淡々と言葉を紡ぐ。

「『聖杯』が冬木の町に出現します。レプリカですが、『願望機』として機能する作られたモノです。『教会』の管轄下の最高位の聖遺物であり『サーヴァント』と云う厄介な存在が顕現しますが、願いが叶うと云う魅力を見過ごす訳にはいきません。横から略奪しようかと思っているんです。私の願いは『過去現在未来(すべてのカレーのレシピと今手に入らない食材、香辛料』を得る事です。秋葉さんも何か一つは願いがあるんじゃないですか?」

 シエルは言葉の終わりに秋葉の可哀想な胸へ一度、ちらり、と視軸を移して、秋葉の瞳へ戻す。

「――最後の視線が気になりますが、其の話が真実(ほんとうならば大変興味深いです。しかし、如何やって管轄下のモノを横取るんですか?」

「『聖堂教会埋葬機関第七司祭』には独断の審問権があり、『聖杯』の出現には『歪み』が必ず生じます。だから『魔』が現れる。そして、『異端』の『サーヴァント』が現れたのならば、弾圧する権利があるんです。執行中に得られるモノをかすめ取っても文句を云われる筋合いはありません。そして、日本の退魔機関より私個人――『第七司祭』――に公的な依頼――『聖杯戦争』の停止――が来ていますから問題はありません」

「そうですか。私に手伝ってくれと?」

 はい、とシエルは答えた。

「遠野君とアルクェイドには既に琥珀さんから協力を取り付けて貰いました。そして、貴方が加わるならば更に戦力が増すんです。共闘し、其の後に『聖杯』の所有権を殺し合い(話し合いませんか?」

 秋葉は微笑みを浮かべ(ながら足を組んだ。

「良いでしょう。其の申し出を承認します。危険なので琥珀と翡翠は屋敷に残し、私たちで『聖杯』を貰いに行きましょう」

「ええ。色善い返事を貰えると思っていました。では後日、【冬木市】へ向かいましょう」

 願いには志貴の愛情を一人で受けたいと云うモノもあるが、秋葉とシエルも『聖杯』の様な無粋なモノで叶えたいとは思わない。実力で得るのが目的であり、其の他の叶えられない願いを果たしたいのだ。

 一人はカレーの信徒たる欲望の為に、
 一人は呪いにでも掛かっているのか全く成長しない胸の為に、
 ――全力を賭ける。























 黒塗りの車が高速道路を颯爽と走っている。
 シエルが運転する此の車は、『魔霊語(ルーン』での対魔力や装甲強化等によって物騒な攻撃にも幾らかは耐えられると云う。

 運転席にシエル、助手席に秋葉、後部座席に志貴とアルクェイドが座っている。

 志貴は流れる景色を視界に入れ、それからシエルへ視軸を移した。

「先輩。【冬木市】は現在どんな状況何ですか?」

「『陰陽寮』に依ると儀式の被害者は1000を越え、更に増えているそうですよ。行方不明者は650人ですかね」

 『陰陽寮』とは日本に存在する退魔機関である。正式名称『内閣直属霊的防衛機関陰陽寮皇土管理局』と云う。
 【蒼崎】や【遠坂】の土地は『協会』の管轄であり、『教会』にも関係が深い【遠坂】が管理する【冬木】の土地は『陰陽寮』の力が弱い。

 『聖杯戦争』と云う大規模な儀式魔術を停止する様に『協会』に『陰陽寮』は勧告しているが、自己中な此の組織が聞く筈が無い。『陰陽寮』の『戦術士』を派遣しても良いが、『協会』との摩擦が深まる為に行っていない。下手をすれば戦争になる。
 だが。
 過去に数百人の死傷者を出してから僅か十年で第五回聖杯戦争を行うと云うのだ。前代までの『陰陽寮』が黙認していたからと云って、今回は見過ごすわけにはいかない。幸い『教会』の鬼札が日本に滞在している為に個人的に依頼した。もし失敗しても『第七位』に責任転嫁出来る上に、『白き姫君』も加わると云う。『陰陽寮』にとって此程善い手札はないだろう。

「『陰陽寮』か。名前だけは知ってはいたけど馴染みが薄いな」

 志貴は車内の屋根を軽く睨み、力を抜いて緩りと座席に身を沈めた。

 『陰陽寮』は日本の公的機関の為に名前は一般人であった志貴も知っている。霊的、と名称から判る用に『神秘』の公開が為されているのだ。公開と(いえども一般人が知っているのは恐山のイタコや管使いの存在、陰陽等、『オカルト』が真実(ほんとうだと云う知識ぐらいである。詳しくは解らない。しかし、日本に於いて少しでも『魔導』に興味があるならば、『陰陽道八十四家』等の存在を知る事が出来る。
 故に、僅かと雖も『神秘』の公開をしている為に、『協会』との仲が、『教会』と『協会』のよりも悪い。

「そうですね。『彼方側』に居たら如何でも良い事ですが、『此方側』に居たらかなり有名ですよ。遠野君にとって身近に感じさせる為の情報は――『七夜』へ『混血』の処理を依頼していたのが『陰陽寮』ですね」

「へえ。御得意様だったんだ」

 話好きのアルクェイドが静かな理由は、志貴の膝枕で丸まり乍ら寝ているからである。
 故にシエルは志貴との会話で気分を落ち着かせ、秋葉は怒髪天の心境の為に逆様(はんたいに静まっている。車に乗り込む時に出遅れたのが原因と自で判っている為に文句を云うに云えない状況なのだ。

 車は流れる。志貴は気付かない、絶妙な空間を維持したまま。























 車は高速を乗り、山を越え、海が見えて来た。『聖杯戦争』が催される【冬木の町】。【新都】を駆ける車から観た外観は、死んでる町であった。

 人は表向きの発表である毒ガス事件や通り魔事件に警戒して出歩かず、マンション等の人が住むべき場所からは悲しみが漏れている。
 サラリーマンが仕事から帰ると自の家族を含むフロア(すべての住人が消失していたり、家族が夜勤の仕事から帰る父を待っていると、後から父を含む全ての職場の人が消失したと連絡を受けたり、と悲しみが渦巻いている。

「シエル。そのまま真っ直ぐね」

 アルクェイドは後ろから鋭い眼で目的までの指針を告げる。

 アルクェイドが差す方向にあるのは(とても大きな『歪み』の跡。死徒が滅びてから『浄化』が必要なのと同じ様に、目的の地は穢れている。
 『聖杯戦争』は此の町で行われている。否。既に終わっているかもしれない。此程までに名残があるのに、危機感等が全くないのだ。嵐の前の静けさではなく、既に台風が通過した後、否。台風では生温い。戦後の焼け野原の様だ。

 シエルも『歪み』を感じる事が出来るが、能力は言或事にアルクェイドに及ばない。故に判断をアルクェイドに任しているのだ。まあ、人間と『真祖』を比べるのは莫迦らしいが。



 景色が流れる。【新都オフィス街】を抜け、【駅前パーク】を過ぎ、【冬木中央公園】を眺め、【冬木大橋】を越え、【マウント深山商店街】を通り、【交差点】を渡り、【穂群原学園】を見かけ、【柳洞寺】の麓に着いた。

 車が止まり、秋葉は車内から石段を冷ややかな視線で見上げた。

「――厭な処」

「そうですね。空気が凝っていて、『歪み』がきついです。では、降りましょうか」

 シエルの掛け声に続いて、皆が車から降りた。

「如何するんですか? 先輩」

 志貴は躰を車に寄り掛け乍ら、依頼主に訊いた。

「『陰陽寮』からは儀式の停止を頼まれたのですが、既に終っているみたいですねー。如何しましょうか?」

 閑寂(しん、と辺りに静寂が広まった。態態(わざわざこんな遠くに来たのにそんな事を云われたら如何すれば善いのだろうか。
 シエルは苦笑いを浮かべ、秋葉は契約破棄同然の為に青筋を立て、アルクェイドは志貴の横に付き、志貴は呆れて口許を弛緩した。

「ん〜? 調査でもしてみたら」

「そ、そうですね。アルクェイドの云う通りです。まだ何もしていないのですから、まずは行動あるのにです」

 シエルはアルクェイドの何気ない一言に口早やかに捲し立て、大手を振って石階段を進み始めた。
 志貴と秋葉は溜息を吐き、肩を竦めてから歩き出した。僅かな処で兄妹であると云うのが判る。
 アルクェイドはそんな三人の後から木漏れ日が零れる石段を登って行く。



 舞い踊る光の粒子の中を抜け、石段を登り終えると、半壊した寺院が見えた。

 石畳は隆起し、木木は薙ぎ倒れ、社は崩れている。

「うわ〜。凄いな此れは」

 志貴は辺りを見回し、(ついでアルクェイドへ視軸を移した。

「なあ、アルクェイド、生きている人って居るか?」

「んー? 寺内は無人よ。此の死地に生存するのは二人だけ。だけど怪訝(おかしいわ。だって地下に居るんだもの。それもかなり深く」

「――地下か。任せられるか?」

 志貴の問いにアルクェイドはえへへ、と微笑った。

「勿論☆」

 アルクェイドは隆起して足場が悪い道を歩き、寺の中央に立った。すらり、と片手を上げる。

 其れに呼応する様に風が足下から吹き上げ、蒼いスカートが踊り、金色の髪が舞う。

 アルクェイドは眼を鋭く細めた。

 木木が泣き声を上げ、大気が蠢き、第五架空元素(エーテルが吹き荒れる。

 変化は直ぐに起こった。

 アルクェイドを中心に黒い穴が広がって行く。地に穴が開き、石が土が消えて行く。

 中空に浮くアルクェイドは更に片手を上げ、両腕を上げた。

「むっ」

 アルクェイドは眉を顰めた。

 地上に変化は無い。黒い穴から真っ赤な血に染まった白い儀礼服を纏った少女と襤褸襤褸(ぼろぼろのの処処がちぎれた服の少年が浮かんで来た。
 少女の綿糸の様な柔らかい銀色の髪が揺れる。しかしそんな事に気を遣る暇はない。胸元の服は裂け、胸に穴が開き、骨が裏返っている。心臓が無い。真紅に染まった姿を美しいと思うのは場違いだろうか。
 少年は躰から剣が幾数も突き出し、無事な処が見つからない。

「シエル!!!」

 アルクェイドは声を上げると二人を伴って志貴たちの下に舞い降りた。

「――ッ」

 志貴と秋葉は息を飲み込んだ。

 明らかに二人共死に体だ。生きているとは思えない。屍である。だが。
 アルクェイドは生きていると云った。あのアルクェイドが云うのだから生物の生き死にを間違える筈がない。此の様な状態でも生きているのだろう。心臓が無くても、剣が突き出していても生きている。

「アルクェイド、少女の方を任せます!」

 シエルは少年へ向くと直ぐ様『神霊魔術』を起動する。『貯蔵魔力』を注ぎ込み、莫大な数の『魔術回路』をメインとサブの両方を働かす。ロアに刻まれた『魔術刻印』を動かし治療する。そして十節を紡ぎ、シエルが学んだ『治癒魔術』を動かす。此の時点で二つの魔術行使である。更に懐から『陰陽寮』から渡された『治癒符』も同時起動。計三つ。

 シエルは自が生成した魔力(オドだけでなく、此の地の魔力(マナも使っていた。優れた技術力である。武道派の『第七位』だが、さすがは『蛇』に選ばれただけはある。魔術の腕も一流だ。

 『殺す』事しか出来ない志貴と主に『奪う』しかない秋葉は治療には役に立たない。応急処置ならば出来るだろうが、瀕死の者を救う事は出来ない。秋葉は過去に志貴を『共有』の能力で一命を取り留めたが、見知らぬ他人に其処までする義理は無い。『共有』の能力はリスクが高いのだ。故に。
 二人は見守るのみである。

「志貴、借りるわ」

 アルクェイドはシエルが少年を治療し始めた時に、志貴の胸に手を添えた。
 服が裂け、肌膚はひやりとしたアルクェイドの手に直接触れられる。

 途端に目眩が志貴を襲った。足下がおぼつかなくなり、たたらを踏む。倒れそうになった志貴を秋葉が支えた。

「アルクェイドさん!」

 秋葉は怒鳴った。何が目的か解らないが、志貴を不調にする行為を黙認する事等出来る筈がない。許し難い行為だ。

 秋葉は志貴を支え乍らアルクェイドを睨んだ。

 秋葉の視界に映ったのは、昏い液体が球を為してアルクェイドの(てのひらに浮いている光景だった。
 怒りはあるが疑問が湧く。

「何ですか? 其れは」

 秋葉は片眉を顰めてアルクェイドを見遣る。

「前に志貴の治療に使った『原初の海』の一部よ」

 アルクェイドは答えると向き直って、仰向けに横にしている少女の空いた心臓部に球を注いだ。

 昏い球は躍動し、少女の臓腑(なかを蹂躙する。(しばらくすると形が整い、落ち着いてきたのか、一定のリズムで埋まった昏い部分が脈打つ。

「アルクェイド。如何なった?」

 志貴は頭を振り、調子を戻すとアルクェイドに尋いた。

「何であんな状態で生きられていたか解らないけど、此の娘は助かったわ。志貴の『原初の海』を使ったから応急処置は出来きたわよ。けど心臓代わりにするのには、私のは技術不足だから代えが必要になるわね」

 アルクェイドはそう云うと溜息を吐いた。

 元ネロ・カオスの躰。666の因子を持つ、混沌の『原初の海』の様なモノは治療に最適である。躰の欠けた部分を補ったり、臓器を模倣したり出来る。しかし、其の扱いは迚も難しい。完璧に使いこなせる者は、知り合いの人形師ぐらいしか居いないだろう。

「そっか。善かった」

 志貴はふ〜、と息を吐いた。

 少女の髪が風に煽られて揺れる。表情は満ち足りた様な感じがする。
 志貴は今思うと、胸が裂けていた時も同じ表情だった気がした。

「先輩。そっちは如何ですか?」

 志貴の問いにシエルは振り返ると悲しそうな表情で首を振った。

「えっ」

 志貴は言葉が漏れた。
 志貴には此の事に関して何も責任は無い。沢山の『死』を見てきた志貴だが、人が眼の前で死ぬのは矢張り抵抗がある。『死』に近き者が『死』を畏れるのは悪くないだろう。日常とは『死』と無縁の筈である。
 だが。
 志貴の根本にある『死』に関する認識は誰にも解らない。偽善の上の感情か、偽りの感情か、本当にそう思っているのか。

「生きては、います。しかし肉体は完全に死んでるんです。治癒を施したら飛び出していた剣は何故か無くなりましたが、躰と脳髄に欠陥があります。『心霊治療』にて診察をしたら神経が焼き切れていました。死んでる筈なんです。ですが、生きている。矛盾してますね。まるで『魂』が肉体に縛られていない様です」

 『魂』が肉体に縛られていないとは如何云う事なのだろうか。
 脳髄が破損すれば思考出来ない。神経が焼き切れれば躰は動かない。脳髄が正常で覚醒しない状態の者を植物状態と呼ぶが、脳髄が欠けている者は死んでいる筈だ。脳死である。
 しかし。
 矛盾しているが此の少年は肉体が滅んでいても『魂』が乖離(かいりしない。肉体と云う物質的な制約に縛られていないと云う。『魂』は肉体――殻――が機能しなくなれば『輪廻』に引き摺られるのだが、此の少年は当て嵌らないらしい。

「しかし、此の躰では何も出来ません。別の躰が有れば如何にかなるのですが」

 其の場に居る者には或人物が浮かんだが、無償で動く人ではないので諦めた。『教会』に素体は幾数かあるが、其処までする義理はない。此の場で起きた事に関して訊こうと思っていたのだが、無理そうだ。それにしても情報が少なすぎる。

「少女が気付かないと何も進展はしませんね」

 シエルは溜息を吐いた。

 少年を救えなかったのも心残りと云えば心残りだが、此の町に来た目的――『聖杯』の略奪――を果たせられないのが残念だ。『聖杯』らしきものは見あたらないし、感覚で凡てが終わった後だと判る。カレーが――。

「要するに、情報が無いので何も出来ないと云う事ですか」

 秋葉は髪を掻き上げてシエルに尋いた。さらりと髪が揺れる。

「ええ、そうですよ。秋葉さん」

 何を解りきった事を、とシエルは秋葉を見遣った。

「なら此で調べる事が出来ますね」

 秋葉はすらりと手首を返して腕を前に出す。手首にはシンプルな造りの金色の腕輪。其れから垂れた糸が、陽の光に反射した様に煌りと光った。

「――エーテライト」

「そうです。シオンに頂いてから随分と活躍してくれるエーテライトですが、今回も使えそうですね。シオンの様に『高速思考』やら『分割思考』やらは出来ませんが、此処一、二週間の情報を(すくい揚げる事等造作も無い事です」

 活躍、とは矢張り志貴に使っているのだろうか。プライベートが無い者である。いと哀れ。

 秋葉はそう云うと横になっている少年に歩み寄り、プスリ、とエーテライトを憑き刺した。

 一から十まで識る事は出来ない。だが、使い慣れた道具だからこそ、自に適した使用法を秋葉は習得している。他者の記憶と云う記録の項目を疑似的に作り、選択し、自に転送する。霊体にさえ接続出来るかもしれないが、其処まではしない。深く入り込むのは危険なのだ。

 漸くすると秋葉は眉を顰め、苦虫を噛み締めた表情になった。

「此が『聖杯』ですか」

 低く、感情を凍らした声を零した。嫌悪感に包まれている。
 こんな物で胸を大きくしようとしていたなんて嫌気が差した。他者の死の上に胸を大きくするなんて莫迦げている。
 此ならばシエルと云い争いをしていた方が随分と穏やかな口調だ。

「何解ったの?」

 アルクェイドの言葉で振り返り、秋葉は端的に説明する。

「此の『聖杯戦争』の全貌と終結に至った過程ですね。『聖杯』は完全に無くなりました。此の地で再び『聖杯』を奪い合う争いは起こらないでしょう。後は此の少年。衛宮士郎に関してと幾人かの情報です。其の娘の名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルンでした」

「ふ〜ん。――む。私たちが来たのって無駄骨?」

「まあ良いじゃないか。此も何かの縁だよ」

 『聖杯』が無いのなら来た意味はないじゃないか、と、アルクェイドが口先を尖らして眉を顰めたので、志貴はすかさずフォローした。
 志貴の視界に映っているシエルが苦笑いをしているのが見える。

「はい。じゃあ如何しましょうか」

 シエルは乾いた笑みを浮かべ乍ら云った。

「そうですね。まずは衛宮邸に行きましょう。多分『聖杯戦争』の関係者が集まっていると思います。エーテライトで得た情報の詳細は車の中で話しますね」

 秋葉の言葉に皆は頷きで返し、士郎とイリヤを背負って寺を後にした。







救いは月の彼方から 中幕









あとがき


 いつか『月姫』と『Fate』のほのぼのを書きたいなと思ったので、この二組の出会いを書こうかなと。

 桜ルートっぽいですね。終わりの事後処理を月姫の方々が手伝ってくれたと云う感じなのかな。ちょこっと士郎とイリヤを弄っていますが良いですよね? だってイリヤを復活させたいじゃないですか(笑) セイバーは、諦めました(爆) いざと為れば御都合の名の下に他のSSで復活している状態のを書けば良いですしね。

 それにしても『聖杯』に望む願いがカレーと胸だなんて。なんて安直すぎる考えなんだろう。もっと良いのに使うと思うんだけれど、例えばナルバレックの消滅だとか(笑) うん。『聖杯』に頼むのにこんな適した望みはありませんね。

 それでは


[書庫] [後幕]



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