死せるもの
第四章 戦
【トゥスクル國】の北東に位置する【クッチャ・ケッチャ國】。騎馬民族の國で、皇都自体が移動するのが特徴である。皇の名はオリカカン。騎兵の馬はウォプタルと云い、 【トゥスクル國】と【クッチャ・ケッチャ國】が戦を始めて三週間が経った。【クッチャ・ケッチャ國】は引き際を心得ており、兵の消費が目立つと、撤退を 「何もないとこね」 戦場には場違いだと思われる巫女服の女性が腕を組んで立ち、髪が風にさらさらと煽られる。アルクェイドの視界には、陽に 森を抜けて、着いた場所は狙撃には適切な場所だったが、『此の世界』の技術では銃器類は無く、弓等しか無かった為に割と安心して此の地に踏み入る事が出来る。 「けど大勢居るな。土豪でも掘って隠れているのか」 蒼黒の羽織袴を 「そうね」 二人の後ろに居る人たちに驚きと呆れが広がる。アルクェイドと志貴の人外な能力に素直に驚き、自分らにない其の力に呆れたのだ。しかし、拒絶しないのだから良い反応だろう。 此の地に居る【トゥスクル國】の者たちは、皇を含む総勢力である。 皇ハクオロ。侍大将兼騎馬衆隊長ベナウィ。騎馬衆副長クロウ。歩兵衆隊長オボロ。巫ウルトリィ。巫カミュ。剣奴カルラ。薬師エルルゥ。獣使いアルルゥ。朱組弓衆長ドリィ。蒼組弓衆長グラァ。そして、その下に付く一般兵たちである。 「ばらけた方が良いんじゃないか。ハクオロ」 志貴の言葉にハクオロは眼を瞑り、思考し、最前の手段を考える。 「ベナウィ、クロウ」 「「はい」」 「其れ其れの騎馬衆を率いてベナウィは右翼。クロウは森の中を回って平原の後方から襲撃」 「御意に」「 「オボロ」 「おぅ」 「兵を率いて左翼から襲撃。だが、三割の兵を残し、負傷者を回収する兵を森に残しておけ」 「任せろ」 「ウルトリィ、カミュ」 「「はい」」 「矢が届かない上空より戦況の把握、情報を私に伝えてくれ。方術の行使は控えろ。しかし、我軍の戦況の悪い箇所には、相手のリズムを崩すために戦術級方術の行使を許可する」 「解りました」「任せて☆」 「エルルゥ」 「はい」 「負傷者の応急処置を含めた治療の先導を森にて行ってくれ」 「ハクオロさんも気を付けて」 「アルルゥとカルラ」 「なに?」「なんです」 「森の護衛。絶対防衛線を張り、此の空間を結界と成せ」 「ん」「了解りましたわ」 「志貴とアルクェイド」 「………」「何?」 「―――チームを組み、掻き回せ」 「了解」「自由にってことね」 ハクオロは我軍を見渡せる小高い岩の上に乗った。 平穏を求める為に殺し合いをする。兵と そして。 敵國の行為を黙していては民が傷付くのみ。其処でもまた悲劇が生まれる。―――そう、あの時の様に。 ハクオロは【ヤマユラの村】が襲われたと報告を受けた時、脊髄の代わりに氷水を入れられた様な寒気がし、厭な汗を掻いた。あんな思いは二度としたくない。 ―――故に戦う。大切な者たちを護る為に。 ハクオロは眼光鋭く、『仮面皇』の名の下に、声高らかに 『私に続く者に、勝利と明日の日差しを浴びる機会を与えよう!!!』 風がハクオロを讃えるかの様に舞い上がった。落ち葉が踊る。 『死ぬ事は許さん』 続くは言霊。兵の志気を高める為に紡がれる開戦のラッパ。 『―――征け!!!』 言葉が力となり、一人一人に付加し、戦士たちが雄叫びを上がる。 『ウオオオオオオ!!!!!』 戦士たちが駆け出した。 最も死に近き場所へ。 最も誇り高き聖地へ。 ―――戦場へ、駆け出した。 戦士が駆け抜けた戦場への道。其の後を羽織袴と巫女服が歩く。『殺人貴』と『白き姫君』が歩く。 「敵総数5000弱」 志貴が呟いた。 平原を二人のみが歩いている。目的地は 「味方総数4000強」 アルクェイドの髪がさらりと風に揺れた。 「ベナウィ騎馬衆2000とクロウ騎馬衆500」 淡々と此の状況を解析していく。 「右翼、後方計3000」 歩みは止まらない。 「オボロ歩兵衆500」 志貴の眼鏡が逆光によって光った。眼鏡は外さない様だ。 「左翼1000」 アルクェイドが腕を組んで立ち止まった。 「ハクオロ中央軍1000」 志貴もまた、立ち止まる。 「中央1000」 志貴とアルクェイドは互いに向き合った。其れ其れが受け持つ人数を志貴は感覚で、アルクェイドは魔力等に依る『力』で計算した。 「左翼のリズムが悪い。数が不利か。朱組蒼組弓衆の援護があるが―――やばいな」 やばいと云ってはいるが、全く其の様な雰囲気を纏ってはいない。 「ええ、そうね。襲撃箇所左翼に固定」 アルクェイドは組んでいた腕を解いた。 「余り殺したくはないと、甘いことを俺は考えている」 「志貴がそう云うんだったら、なるべくそうするわ」 アルクェイドが眼を細めて、柔らかく微笑んだ。 「世界を殺した為か、未だに『直死の魔眼』が不安定」 『此の世界』に来てから志貴の『力』が安定しない。『世界』を『殺した』のが、未だに響いているのだろう。 志貴は白い パチンッ 小気味良い音を鳴らし、志貴の懐から出したのは一つのナイフ―――七ツ夜―――であった。 「 アルクェイドの爪が伸びる。『空想具現化』が使えないとはいえ、其の規格外な『力』は健在である。『魅了の魔眼』さえある。 「さあ」 志貴がアルクェイドの眼を見て呟く。 状況の確認は終わった。此から―――。 『始めるか/始めましょう』 蒼黒の羽織袴/巫女服 を 戦士たちが通った道筋を、『死』が、駆け出した。 志貴の前をアルクェイドが 流れる風景。大地を踏み、走ると云うよりも、低空を飛んでいる。風が二人を包み、戯れ、否。拒んでいる。『此の世界』に属さない二人を、圧倒的な死臭を撒き散らす二人を拒絶している。空間が、泣いている。 存在を否定し、存在を拒絶し、存在を消滅させたいと、此の空間が泣いている。 しかし。 『此の世界』が二人を認知し、空間の泣き言を無視した。死臭を振り撒く死神たちの存在を、『此の世界』が認知したのだ。 人の 否。其の声に少しは気を後押しされるか。―――敵を殺す覚悟を。 否否。其の声など関係ない。―――殺すのに何も気負いはないのだから。 味方の群を掻い潜り、敵との境界線を踏み越えた。 白朱の女性。アルクェイドが爪を振るう。 パシャッ 乾いた音がした。 視認出来ない速度で振るわれた爪刀は、人を紙の様に切り裂き、刀身を紅く染め上げた。乾いた音は肉塊が血を吹き出す澄んだ音。戦場の醜い怒声ではなく、血が吹き出す綺麗な音。 返り血が服に付く。神聖なる巫女の純白を。 だが。 アルクェイドは気にしない。真っ赤に染められようと、アルクェイドにとって其れは、綺麗な朱であるからだ。血は、何より美しい色彩だ。錆びた鉄の匂いに包まれるが、其れは鼻腔擽る甘美な匂いでしかない。 彼女、吸血鬼、真祖にとって嫌うモノではないのである。 一度、二度、三度、振るわれる度に人が十、二十、三十、と虫の様に死んで行く。此でも最低限の力しか加えてない。鉄の鎧に包まれた。頑丈な筈の装甲が、紙の様に裂けて行く。 志貴は余り殺したくはないと云っていた。しかし、此以下に力を落とすと効率が悪くなるのだ。此の場に居る敵は村村を襲った雑兵500ではない。己の命を賭けた50000の戦士であり、此の場は戦士の聖地―――戦場なのだ。 爪を振るって、音速を超えた為に生じた衝撃波にやられた兵は、死にはしないだろう。自分の前の味方が肉の壁となり、命は助かる奴が居る筈だ。 だが、アルクェイドが振るう度に人が舞い上がり、 アルクェイドは爪を振るい乍ら、志貴を見た。 羽織を そう、志貴は擦れ違う度に七ツ夜を振るっているのである。 七ツ夜は 片足が無ければ立ち上がる事は不可能。其れも、今切断されたばかりでは、精神が肉体を凌駕して、痛みを感じないとしても、バランスがとれずに戦は出来ない。 志貴は宣言通りに殺していない。が、其れは並外れた技量がないと実行できない。鎧の隙間を通し、足の付け根を切断する。膝を切断する。 其の姿は、『殺人貴』にふさわしくなく、『遠野志貴』にはふさわしい。戦場で『遠野志貴』を維持する為に、最も穏やかな刻み方である。命を奪わず、動きを制するのだ。 蟻の様に群群と集まる人の隙間を黒羽織が通り、ぼろぼろ、と人が崩れて行く。 志貴が七ツ夜を振るい―――。 ―――と。
ふるえた。其の時。 志貴の背中が、 ぶるりと 脊髄の中に液体窒素を流し込まれた様な気持ち。全身が絶対零度にまで冷やされ、故に外気の熱さに躰が焼かれそうになる。脳髄感覚だけが正常だ。絶対極の狭間の圧力に潰されそうな感覚。仮に正気を保っていなかったならば、刹那を待たずに志貴は圧壊されていただろう。 躰を縮み込み、瞬間、其の場から空へ離れた。 女性は、艶のある紫がかった流れるような黒髪を後ろで束ねている。強い意志を感じさせる深い蒼色の眼。小さな鼻。桃色の唇。広げれば翼の様に見える垂れた獣耳。茶色の羽衣を纏い、白と紺の着物。腰に鞘。手に持つは日本刀。名を、トウカと云う。 志貴は地に降りる時、つい、敵兵三人の首を斬り落としてしまった。自分を トウカは刀を構え直して、蒼黒の青年を睨んだ。恐怖に震える手を叱咤し、奥歯を噛みしめて、溢れ出す感情を押さえる。死神の様に切り伏せて行く 雑兵は青年に畏れて距離を取り、実質、此の闘いには戦力としての価値がない。此の青年を畏れているのだ。 戦が始まり、箇所として有利だった此の隊列に悪魔が顕れた。一人は、一振りで人を塵としてケチらす『バケモノ』。一人は、人の波を斬り伏せて行く『死神』。 トウカには白朱の女性を相手にする決断が出来なかった。 しかし。 其れには自分を賭けるのに足る願いが必要だ。一番、人に、自分に力を与えてくれる願いは、矢張り大切な人を護りたいと云う意志だろう。 トウカには其れがない。今、彼女を支えているのは種族としての誇りと義。オリカカンとは、傭兵としての契約のみなので、自分の誇りと義、幾ばくかの金の為なのである。そんなモノでは、不可能を可能にする勇気と云う魔法には昇華出来ない。 よって、白朱の『バケモノ』を避け、蒼黒の『死神』を襲った。しかし、其れは逃げであり、そして其の行為は、矢張り間違いだったのだろうか。目の前の青年は―――恐ろしい。 トウカは納刀して、駆けた。時は過去に戻せない。ならば、今 殺し合いとは、首を斬られれば死ぬし、腕を斬られれば刀を振るえず、足を斬られれば走れない。一瞬で凡てが決まるのだ。其の交える瞬間の後に、どちらが立っているかが凡てなのだ。 一歩、二歩、三歩。風をきって距離を詰めて行く。青年はナイフを構えたまま――― 距離が近付いて来る。青年は何故か動かない。何か企んでいるのであろうか。トウカには解らない。しかし、動かないならば好機である。トウカの間合いまであと一歩。 腰を落とし、刀を閃かせた。 「破!」 短い呼気と共に刀が青年に襲いかかる。鞘走りはちりちりと。 鳴り。 加速し。 抜き放たれた。 銀色の線が青年の胸に向かう。絶対の一撃。必殺の一撃だ。刀が叫び、持ち主の意志を実行する。 ―――しかし。 鮮血に濡れる筈の刀に、一つのナイフが添えられた。助走と遠心力により、重い刀の一撃をナイフで受け止められる筈がない。だが、ナイフは受け止める気はない様だ。――― 青年は柔らかく刀を受け流し、トウカの懐に入った。凍った貌がトウカの頬の横にある。まるで抱き合う様な位置なのに、トウカには戦慄が走るのみ。背筋が強ばり、汗が噴き出す。青年の口が僅かに動いたが、トウカには聞き取れない。 ドムッ 「かはっ!」 衝撃と共に躰が浮き上がり、肺の空気が ゾクリ うなじの辺りがぴりぴりと痺れ、警報音が頭の中に響き渡る。眼が捉えたのは喉と心臓を狙う、二筋の銀線。 「きゃぁあああ!!!」 甲高い悲鳴を上げて、とっさに首を曲げ、身を捻る。一瞬が一生に感じられる。勘違いだが、あながちそうとは云い切れない。なぜなら、今此の一瞬で命が終わるかもしれないのだ。 躰をぎりぎりまで捻る。足は曲げないと動かす事が出来ないから、使えない。其れでは遅いのだ。 躰を、捻り、躱し―――きった。喉と心臓に突き刺さる事は防げた。が、熱い熱い熱い。喉が熱い。けれど、全身は冷たい。厭な汗が噴き出し、あの瞬間が怖かった。自分の命を刈り取られる瞬間が恐かった。 首は薄皮を切られた様で、血が垂れる。熱い原因は此の様だ。致命傷でないが、恐怖によって精気を凡て刈り取られた。躰を強ばらせる。とてつもなく、青年が怖い。 トウカが青年を見ると、右手にナイフを持ったまま、左腕をピンと伸ばし、何かを投げた体勢で止まっていた。羽織が靡いた。青年が放ったナイフは、トウカの後ろに居た兵を穿ったが、トウカには確認する暇などない。 ―――死ぬ。 恐怖に包まれる。此の闘いは勝てる気がしない。戦術的に負け、戦略的にも負けるだろう。 ―――知った声が聞こえた。此の声は、オリカカン。何時の間にか場所が動いていた様だ。青年を視界に入れたまま視軸を移すと、彼も武器を落として、ハクオロに向かって何かを云っていた。 ―――此の戦は、負けた。 白朱の『バケモノ』が居て、蒼黒の『死神』が居る。今は逃げるしかない。 トウカはオリカカンの下へ走り出した。 志貴は投げナイフが避けられた事に、驚きと感嘆を感じた。 しかし、女性はハクオロの方へ向きを変えて、瞬時にオリカカンを抱えると、其の場を離れる為に空へ駆けた。 やばい。戦とは頭を制しないと終わらない。此の場でオリカカンを捕らえるなり、殺すなりをしないといけないのだ。 故に―――志貴は叫んだ。 「アルクェイド!!!」 戦況を魔力に依る『力』で、凡て把握していたアルクェイドは志貴の意思を汲み取る。躰を動かし、今、空を跳んでいる最中のトウカの横に並んだ。 「―――なっ!?」 トウカは白朱の『バケモノ』が瞬時にして横に現れた為に、オリカカンを抱えたまま驚きと恐怖の声を上げた。 アルクェイドはトウカの頭を掴み、地面に叩きつける。 ダンッ 「あぅっ」 トウカは淡い吐息を漏らした。躰が灼ける様に熱い。骨は軋み、筋肉は悲鳴を上げる。指一本動かない。 志貴とハクオロは、トウカとオリカカンの下へ、アルクェイドの横へ着いた。 【クッチャ・ケッチャ國】の軍勢は、皇が捕らわれた為に動かなくなった。大勢が動く戦は、頭が制されれば終わるのである。 「んっ?」 「如何した?アルクェイド」 志貴の声を聞いても、アルクェイドは屈んで、オリカカンの髪を掴み上げ、貌を睨み付ける。 「志貴」 「何?」 「此の人、頭ん中 「なっ!?」 ハクオロの驚きの声が上がった。 【クッチャ・ケッチャ國】の皇が 「修正できるか?」 「ん〜。かなり深い 「やってくれ」 志貴はハクオロの意見を聞かずに、自分の意思を云った。 ハクオロとは利害関係の一致に過ぎない。否。情が湧いたから其れだけではないか。【トゥスクル國】は過ごし易い。 大気が蠢き、平原の草が激しく揺れる。アルクェイドは『世界』に満ちる 多くの吸血鬼が所有する能力『魔眼』。アルクェイドが所有するのは『魅了の魔眼』と呼ばれ、精神掌握、傀儡操作、記憶改竄、等の様様な『力』がある。 オリカカンの脳髄に干渉。深層に封をされた情報を強制 「終わったわ」 アルクェイドの瞳が元の色彩に戻る。 「彼の脳髄を元の状態戻したわ。情報も読み取ったけど、シオンみたいに完璧にはいかないわね」 「まあ、そうだろうな。で、 「直ぐによ」 アルクェイドの言葉に呼応する様に、オリカカンの肩がピクリと動いた。二、三度頭を振り、志貴たちを見遣る。 「ラクシャインは何処だ!?奴は何処に居る!!先程まで此処に居た筈だぞ!!!」 「失敗?」 「いいえ、成功よ。ラクシャインってのはオリカカンの義弟で、家族の仇だそうよ。殺された仇討ちで【トゥスクル國】に攻め込んだみたい」 「國に攻め入るって―――それじゃあラクシャインってのは【トゥスクル國】に居るのか?」 志貴は眉を顰めた。 「先程までならオリカカンの中には居たわ。ハクオロを通してね」 「ハクオロがラクシャイン?」 志貴はハクオロに視軸を向けた。ハクオロは記憶喪失なので、過去を持たないのだ。 「いいえ、違うわ。先程までって云ったでしょ。其れは改竄後の記憶なの」 「じゃあ。勘違いで【トゥスクル國】を襲ったと云う事か。否。違う。そうなる様に仕向けた奴が居るな。オリカカンの記憶を弄った奴が」 シャリ 僅かな布擦れの音がした。 「其れでは! 志貴とアルクェイドが声の方を向くと、 「如何なんだろ?」 志貴は首を傾げた。 「本人に聞いてみれば」 アルクェイドはオリカカンを解放する。 「如何なんですかオリカカン皇。ハクオロ皇がラクシャインじゃないんですか!?」 「ハクオロ?違うわ!こんな 「―――そ、そんな」 トウカは貌を青白くすると、―――崩れ落ちる。 仇討ちと云う目的を信じ、定めた道筋が、今、崩れ落ちたのだ。 『此の世界』では仇討ちは正当な行為とされている。勿論、殺しと云う犯罪は國として取り締まるべき対象なのだが、世論では『元の世界』と『此の世界』では善悪の受け取り方が違うのである。 「如何なっているか解んないけど、ご愁傷様って云っとけば良いのかな」 志貴は倒れ掛けたトウカを支えて苦笑した。 ―――先程『死合い』をした アルクェイドは志貴の行為を気にしない様だ。信頼、しているのだろう。 「じゃあ、ハクオロ。此の後の残りは、俺達にとって雑務と事務処理だから遣らなくて良いのか?」 雑務と事務処理。此の戦で出た死傷者の埋葬と治療等の事だ。 「ああ」 ハクオロは オリカカンが傀儡だと判ってから、初めて声を発した。志貴とアルクェイドの会話。オリカカンの言葉。トウカの行為。―――ハクオロは事象を観て、判断し、決断する。冷血で冷酷で静寂な決断を迫られた場合も、迷わず、決める事が出来るハクオロは、見定めて、剣を道に突き刺すのである。 「アルクェイド。久しぶりに森へ行くか」 志貴はトウカをハクオロに渡し乍らアルクェイドを誘った。 「うん。行こっ」 微笑み。太陽の微笑みを浮かべて、アルクェイドは志貴の手を握る。 二人は歩き出した。 戦後の雑務をするハクオロの事等微塵も考えず、陽が零れる【カカエラユラの森】を思い浮かべた。そして、【ヤマユラの村】に居るソポクたちと会うのを楽しみに、平原を歩き出した。 第四章 戦 終幕 あとがき 其の一 『死せるもの』での初戦。ハクオロが開戦の合図をするのは、よく出来たかなぁと思ったり。ハクオロが格好良かった気がします。 アルクェイドの闘いは―――。人を明るく殺せたかな(爆) 巫女服が真っ赤に染まってしまいました。血です。べとべとです。穢されちゃいました。 血は落ちずらいのにねぇ。 志貴は殺人鬼のくせに自制してるし、『反転』しない様に気を付けてましたね。最後は殺気を感じてある女性からの一撃を躱してます。 誰だがは『うたわれるもの』をプレイした人だったならば分かりますよね。とっても強そうになってしまいました(笑) バトルは苦手だなぁ。けど頑張りますか。 其の二 『瞬間』の戦い。志貴は躱す、受け流す、蹴る、投げるしかやってないです。トウカにとっては斬る、抜刀、蹴られる、躱す。短い刻の中に、精神を研ぎ澄ませての『死合い』です。短時間のを書くのに、あんなに長く描写してしまって………。最後は長引きそうになったから、強引に、無理矢理に、強制的に終わらせてしまって………。難しいなぁ。如何でしょうかね、今回の話は?こんなバトルは? 私は、最後の締め以外は、動作が少ない割にはまあまあの出来なのかなと(苦笑) 技量が足らないです。 アルクェイドに続き、志貴も強いですね。斬激が見えてないと、刃渡りが短いナイフでは添えるなんて出来ません。その次は、懐に入って蹴り!けど、プスッと刺さなかったから『殺人貴』にはなっていませんでしたね。 それにしても、トウカの耳元で何を囁いたんだか(笑)『死合い』を楽しませてくれ、とか、可愛いね、とか、『殺人貴』寄りか『絶倫超人』寄りで、様様ありそうだけど、確定は出来ないんじゃないでしょうか。作者なのになぁ(爆) それでは |