Fate / Tea Time








 甘い匂いに包まれている喫茶店アーネンエルベ。
 其処に衛宮士郎とセイバー、志貴とレンが同じ席に向かい合って座っている。

「この娘、人じゃないのか?」

 士郎は首を傾げてレンの事を観た。セイバーも眼を丸く見開く。



 衛宮士郎は魔術師である。八年前から正義の味方になるために修練を重ねている。しかし才能はなく、その腕前は半人前。だが。
 聖杯戦争が終結した後に、一つの事に優れた魔術師だと判った。

 志貴たちを見かけて何故この喫茶店に入ったかは判らない。規格外の使い魔。サーウ゛ァント。想い人であるセイバーと共にこの喫茶店を見たら、何故かふらり、と寄っていた。



 二人の視線にレンはケーキを食べる手を一度止めて、二人の視線を受けた。何に驚いているか判らないレンは小首を傾げて、興味を無くしたのか再びケーキの攻略に挑む。

「そうだよ。俺の使い魔」

 志貴は頷いた。
 作者が叫びたいことをぶちまける、この御都合主義に覆われた異次元空間には何度か来たことがあるために、さほど驚かずにこの空間を受け入れている。
 そおいえば初めて来たのは『げっちゃ』が最初であった気がする。

「君は魔術師でないけど、マスターなんだよね」

 士郎は震えそうになる声を抑えて、平坦な声で問い掛けた。
 士郎が何を訊きたいかを判ったセイバーは頬を赤く染めて視軸をテーブルの上に移した。

「うん」

 先駆者である志貴は士郎の疑問に素直に応える。

「魔力の供給は如何やっているんだ?」

 士郎は問いて自分は何が訊きたいのか。何を知りたいのかを知った。
 志郎が魔力をセイバーに供給するためには精を送るしかない。それは仕方ない。魔術師として未熟なのは誰よりも自分が解っている。だが、性交を愛情表現のためだけに行う事にしたい。供給という付加価値があるのが、何故か胸にこびり付いていたのだ。

 士郎はこの幼い少女に自分たちと同じ精の供給方が当て嵌るとは思えない。幼女にそんなことをするとは思えなかったのだ。

「エッチ」

 さらり、とレンが言った。

 志貴はレンを見て、ぱくぱく、と金魚の様に無意味に口を動かす。
 ピキリと空間が固まった気がする。志郎の問いは予想範囲内ではあった。
 だが。
 レンが答えるなんて。それも真実をスパーン、と言われてしまった。

 ギチギチと錆びたブリキ人形の様に首を目の前の二人に向ける。



 ――うわぁ。眼が何処か遠くを見つめてる。



「あの、その」

 志貴は言葉をはっきり喋れない。何か言わないと。何か打開策を講じないと――。
 ――とんでもないことになる。



 士郎はレンの言葉に思考が混濁した。



 ――この人たちに比べたら俺なんて何も問題ないじゃないか。



 否。士郎は何か迷いが振り切れた様だ。



 ――何故あんなに思い詰めてしまったんだろう。供給とかは関係ない。好きだから良いじゃないか。こんな人もいるんだし。



「そうですか。今日はこの辺で失礼します」

 士郎は頭を下げてセイバーの手を取って立ち上った。
 セイバーは頬を赤くしたまま立ち上がる。

「迷いが晴れました。ありがとうございます」

「え? あ?」

 当惑する志貴とケーキを食べているレンを残し、士郎とセイバーはアーネルエルベを後にする。



 ――何も問題はない。
 あの幼女も全く気にしていないじゃないか。
 あの青年は鬼畜じゃないか。
 俺も気にしなくて良いや。



 澄み渡る蒼空の下、志郎は何かに(めざ)た。







Fate / Tea Time 終幕









あとがき


 Fate面白いですね。このSSを書いたのはセイバーのみクリアしている状態です。

 このSSは電波ですかね。Fateをやっている時に志貴と比べて『絶倫超人』にはなれないのかなぁ、と思いました。しかしこれが覚醒の兆しです(爆)

 どうやって会わせようかなぁ、と思って月姫の魔処『アーネンエルベ』を使いました。『げっちゃ』と同じような空間なので御都合主義の名の下に邂逅です。

短短編は書くのが楽です。思いつきをポイッと記すだけですからね。

それでは

 


[書庫]



アクセス解析 SEO/SEO対策