the incarnation of world
朱眼鮮血

第一章 四人の出会い








「ん〜いい天気だね〜」
 緑豊かな噴水のある公園で、銀髪紅眼という、アルビノによく見られる外見的特徴を備えた見た目14、5歳くらいの少年、碇シンジはまどろんでいる。
 ただの少年の様に。



 そう、シンジは見た目通りのか弱い存在ではない。
 赤い世界――人類を全て融合させ、1つの巨大な生命と為す、悪魔の計画のなれの果て――において、彼は徹底的なまでに壊され、そして生まれ変わった。膨大な量の知識を得、肉体も再構成されていた。
 そして再構築されたシンジの人格は、シンジであり、シンジでないものとなっていた。
 メインの人格を構成する15年間の記憶はあるが、それは全体の中のごく一部でしかない。今のシンジは、『世界の管理者』として、改めて構成構築されていたのである。

 しかしここに一つ、『世界』にとっての誤算が生じていた。本来シンジは、『世界』を管理するという『制約』に縛られるはずだった。が、レイとカヲルという存在が、己のすべてと引き換えに、その『制約』から彼を解放していたのだ。
 シンジは浜辺で目覚めたとき、嘆き悲しんだ。とても大切な二人が、自分を救うために身代わりになったことを『識』って。





 時は過ぎる。
 『世界』に一人というのはとても寂しく、つまらない。
 楽しみを求めてシンジは旅に出た。
 それも『世界』を取り込んでという、今までの管理者がしたことがないことをして。
 『世界』に己を溶け込ますというのなら、歴代の管理者の中にも、其れをした者はいたのであるが。



   そうすれば幾万年、幾億年、いつまでも忘れないと。



 たしかにシンジが『世界』の創世を思えば、自分の好きな世界が創れたがそのような傲慢なことをシンジにはできなかった。他人に運命を定められるのも定めるのも嫌だったのだ。『世界』の『制約』に縛られなかった結果での選択の一つである。
 シンジは今までにいろいろな『世界』を抑止力が働かない程度に旅してきた。

樹雷

霊界

三只眼吽迦羅

ナデシコ

ユグドラシルシステム

ハンター

幕末

太正

桃源郷

王立国境騎士団

ロードオブナイトメア

真祖


 それぞれの『世界』でのお話しは別の機会として、シンジはそこで様々な『意志』を学んだ。
 よって齢千歳をゆうに越えている。
 先程までにぎやかな人達が多い『世界』から、また新たに旅をこの『世界』にしに来たシンジである。別れは寂しいが出会いがある旅というものをシンジは気にいっている。






















 シンジがベンチでまどろんでいると、一人の少年が向かいのベンチに腰掛けた。
 年は5、6歳であろうか、茶と黒が混じったような色の髪でシンジと同じような髪形であり、眼は碧眼、丸い眼鏡をしていて、額には雷のような痕がある。服はお下がりだろうか、いやそんなものではない。洗濯はしてあるようだが少しボロに見える。
 なんとなくシンジは話しかけた。
 ここでの言語は話せる。まどろむ前に、この『世界』からこの辺りの地域の文化、風習、言語を情報として汲み取っていたのである。
「いい公園だね、緑豊かで自然あふれる場所だ。天気もいいしね」
 話しかけながら少年の隣に座った。
「……お兄ちゃん、誰?」
 一瞬、なんで話しかけるの?と少年は疑問に思ったが、まず名前を尋ねた。
「碇シンジだよ、君は?」
「……ハリー・ポッター」
「この公園には初めて来たんだけど、なんか癒される感じがするよ」
「そう?よく分からないけど、いいとこだよ」

 その後は何気ない、友達とするような雑談をいろいろ話した。






















 時が過ぎ、蒼い空が夕焼けに染まっていく。
 シンジはベンチから立ち上がった。随分楽しい時が過ごせた。
「もう行っちゃうの?」
 シンジはハリーに何かを感じ取っていた。
「明日、またここで会おう」
 シンジがそう言ったら、ハリーの表情が明るくなった。シンジはそんなにハリーにとって楽しかったかな、と思いながら、立ち上がったハリーに向けて挨拶をした。
出会い絵 双葉 「また」
「うん、絶対だよ!」
 笑顔で去ってくハリーを見送り、シンジはまたベンチに腰掛けた。
 シンジは昼にハリーが来る前に、様々な準備をした。
 まずは情報、『世界』から常識的なことを汲み上げる。この『世界』での魔法使いという存在、リリンと同じようなマグルと呼ばれる人間、赤子のハリー・ポッターによって最悪最凶の魔法使いウ゛ォルデモートが殺されたということ、魔法使いを育成する機関が存在すること、他にもいろいろな常識を識っていく。けど一つ常識として認められないことがあった。この『世界』での『魔法』と呼ばれるものは多くが『魔術』であり、本当の意味での『魔法使い』は少ないということを。前の『世界』で学んだことのと食い違っていたのだ。それにこちらのほうが、より正しいとシンジは思う。
 昼はハリーとの会話、夜は『世界』への適応をしていた。
 ハリーとはいろいろ話をしていた、今の親は本当の両親でないこと、叔父のダーズリー家での最悪な扱い、置いてかれ旅行に行く留守番してることなど他にも様々を。
 シンジは壊れる前のシンジの頃を記録から引き出される話だった。親に預けられた家でのこと、そこで形成されたシンジの弱いとされる人格、しかしハリーに、シンジは自分とは正反対の強い人になるのを感じていた。
『世界』への適応は戸籍や住居などもである。
 創世と破壊を司る存在として住居を創るのは楽だった。シンジは自分が思い描いた『世界』をこの『世界』に侵食し創ることができるのである。しかし、それは『修正力』によって元に正そうとされるので常に創り続けることが必要である。それに命まで支配しようとすれば『抑止力』によって排除されることもあるので万能でもないのであった。よってシンジは自分が管理する『世界』以外での殺害はできないのである。
 住居はやはり日本の自然に囲まれているところに創る、人との触れ合いがある田舎な場所だ。
 シンジはハリーに『世界』の中心として巻き込まれる存在だと感じていた。自惚れかもしれないが長く生きてきて、そのような感覚が研ぎ澄まされてきていた。これも『世界の管理者』として必要な力だったのかもしれない。
 ハリーと会って七日が過ぎた、シンジはハリーにこの先で起こる出来事のために『力』を与えたいと思っていた。この少年なら正しく扱えるだろうと。
 そう思いシンジは尋ねた。
「ハリー、もう僕はここに来ないけど共に来るかい?」
 突然な話だと思う、しかしハリーはこの提案に乗りたいと思う自分に気付いていた。ダーズリー家での生活は最悪だ。この人はなぜか疑問に思ったことにすぐ答えてくれるし、一緒にいて楽しい。よってハリーは決意した。
「いいの?うん、一緒にいたい!」






















 そしてシンジはハリーを連れて日本へ渡った。シンジにとってもハリーにとっても楽しい生活を過ごしていく。
 シンジはハリーに様々なことを教えていった。『あちら』側で役立つ料理や遊び、語学などの勉強についてや『こちら』側で必要な『世界』のことと力などを。
 シンジはハリーに魔術を伝えることにした。
 魔法と魔術の違いとは魔法は魔術と混同されがちだがそれとは異なり、本当の意味で「奇跡」と呼べる現象を引き起こす神秘である。
 その時代において、文明の力ではいかに資金・時間を注ぎ込もうとも実現不可能な出来事を可能とするものなのだ。
 ハリーには魔術を行使するのに必要な体に持つ魔力回路が多く、ポテンシャルも高く、飲み込みも良かったので教える側としては実に楽しいとシンジは感じていた。
 魔術の行使には魔術を身に刻み、魔術回路によって公式を組み立てる、そして詠唱によって弓を引くような感じだ。もちろん詠唱がないものもある。それか、ルーンと呼ばれる魔霊語によって行使することもできるし、ものに施された呪刻によって付加された魔術効果があるものもある。魔術師にも様々なものがいるのである。
 シンジとハリーは師弟の関係にあり、ハリーはシンジのことを先生と呼んでいる。
 それとハリーには魔眼が備わっていた。訓練で体術と魔術を使っての戦闘をしたときには、瀕死の状態までにシンジは追い込むのである。もちろんその後に治癒魔術によっての治療を施す。
 あるときいつもと同様に追い込んだときに、ハリーの前に色彩化された線が伸びていたのである。それは魔術によってハリーを攻撃するはずの圧縮された水の通り道、ハリーの脳は魔眼を通じシンジの攻撃意識を識ることができたのである、それに併用された魂にまで刻まれたものがハリーを守るために発動した。殺意を感じたのである。
 死に近付くたびにそれは嫌だという思いによって脳内において先天的に開いていた回線が開いてしまったのだ。
 眼の色は蒼色に変わり、透き通るような色彩をしていた。
 このとき放った言霊は


−−−消えろ



死を避けるために事象を織り消しさった力、これを二つあわせて『抑止の魔眼』と名付けよう。
 しかし、この万能だと思われる力には弱点がある。事象を識ようと普通、見えないものを見ようとするので、脳に負荷が掛かり頭痛がするのだ。それも人として限界以上のものを識ろうとすれば脳が過負荷で脳神経が焼き切れてしまう、廃人になってしまうのだ。
 シンジは魔術と魔眼、刻まれた力の制御法を教えていった、いつか来る『こちら』側での出来事に備えて。






















 ハリーハリーと暮らして数年後に玄関先で黒い和服に身を包んだシンジの元にある封書が梟によって届いた。
「ハリー!」
 シンジ少し声を大きく玄関から呼んだ。
「なんですか?先生」
 ジーンズにシャツと軽い服装をしたハリーが出てきた。今だに子供っぽいとこは完全には抜けないけど成長している。変わらないシンジのことは気にしない。生活していく中でシンジのことも話してもらっていたのだ。
「ほい、手紙。それも変なやつ」
 シンジが手に持っていたのは緑色の封書、ホグワーツ魔法術学校と書かれていた。
 ハリーはその場で封書を開けた、中にはシンジから聞いたことがあるこの『世界』の魔法使い育成機関であるホグワーツ魔法術学校への案内が書かれていた。
「先生、前から考えていたけど、僕、この学校に通っていいですか?」
 ハリーは小学校には通っていないのである。その分憧れというものがあり、自分と同じ境遇の人達と共に学びたいという願いがあったのだ。たとえ自分のほうがホグワーツ魔法術学校の生徒より『外れ』ていても、境界の中にいるということにしたいのだ。
 なぜ、より『外れ』ているかは魔眼保持者という超能力者は魔術師とは違うのだ。魔術師は論理など説明できるなかにいるが、超能力を発動させる回線は常人が使用しているモノとは違うが故に社会に適応するために必要な常識・思考様式等を備えていない。そのため『社会不適応者』となりやすいのだ。大抵の超能力者は回線を切り替える事によってうまく社会に溶け込んでいる。
 そうでない場合は周りの人に理解されない、拒絶されたり、何も知らずに使い過ぎで脳神経が焼き切れてしまうことなどで長く生きられないのだ。
「もちろん、いいよ。自分が正しいと思い、やりたいことをやりなといつも言ってるし」
 シンジは笑顔で答えた。
「ありがとうございます、先生」
 ハリーも笑顔になる。
「実はこうなると思ってたんだよね、ほら、入学祝い」
「……はい?」
 ハリーは一瞬呆れた表情になる。随分前に決心して、いつ言おうか悩んでいたのに許可がおりるどころかプレゼントまで用意されていたのだ。
「はは、先生準備よすぎです……ありがとうございます」
 ハリーはシンジから白い杖を受け取った。この『世界』の魔法は基本的には杖という媒体をもちいて、増幅制御を行い、力ある言葉、言霊によって行使するのだ。
「その杖は光と粒子のようなもので構成されていて魔力増幅量、制御に至まで、自分の手のように自在にできるし魔術回路も組んである、それと僕が消えない限り消滅しないよ」
 シンジはさらりとトンでもないことを言う。
「え?それって……」
 ハリーには一つしか思い至れなかった。
「うん、僕の骨だよ」
 明るく笑顔で言われてもハリーは困った。どこに入学祝いで自分の骨を与える人がいるのだろうか?ハリーはシンジの神経を少し疑問に思ったが『外れ』ているのはいつものことだったなと、あきらめた。けどうれしさはある。『世界』の化身といえるシンジの一部は修正を受け続けるが、これほどの逸材は他にないと思った。シンジの意思が無くならない限りこの杖は消えないのだ。
「それと、使い魔」
 シンジの右手にはいつのまにか、赤い眼で白い毛並みの猫がいた。
「こいつは造ったもので修正を受けないからね、ほい」
 ハリーは手渡された白猫を見て、シンジの眼を見て覚悟する。
 右手人差し指を切り、血を流す。そして白猫の口に持っていく。
 白猫はハリーの血を舐めていく。これにより契約は結ばれる。それと使い魔には精の補給が必要になるので月一ぐらいで血を飲ます必要がある。共にいるだけでもいいのだが、直接摂取したほうが効率がいいのだ。
「こいつの名前はリンだよ」
「よろしくね、リン」
 ハリーはそういいながらリンの頭を撫でる。
「じゃあ早速必要なものでも買いにいくか」
「今からですか、そんなに急がなくても……」
 封書が届いてその日のうちに出かけなくてもいいとハリーは思った。
「ハリー、行くとこはヨーロッパだよ、一日掛けても着かないかもしれないし、途中寄り道しながら行こう!」
 さわやかな笑顔でシンジは言った。
「先生のデュラックの海使わないんですか!?転移系魔術でもいいですし、そんなに時間掛かるんですよ!」
 そんな長い距離ハリーにとって退屈になりそうだった。
「旅は移動している間も重要なのさ!」
 あぁ、シンジのさわやか笑顔が消えない…と、こうなったらテコでも意思を変えないとハリーは知っているからもうあきらめた。
はぁ、分かりました。準備しますね」
 ハリーは封書を左手、杖を右手に、右肩に白猫リンを乗せてとぼとぼ自分の部屋に向かっていく。
「そんな哀愁漂わせなくてもいいじゃないかな」
 シンジの笑顔が若干引きつっていた。






















ダイアゴン横丁の入口のレンガがアーチ状に開けていく。
 ハリーはここまで来るのに長かったなぁと感慨に浸りながら見ていた。
 実はシンジが小型航空機を創ったのだが、真っ直ぐに行かず、様々な国に寄って行ったのだ。それも降りるところがないからと、途中で創るのをやめてしまったのだ。創るのをやめたら『修正力』によって消滅してしまう。
 それもいきなり消えるのでビックリどころではなかったのだ。おちゃめとかでは済まされないよ、後で……とハリーは毒舌ながら空中浮遊の魔術を急展開しなければいかなくなり、波乱万丈の旅だった。
 まぁ途中で飲んだココナッツミルクはおいしかったなと思いながら二週間の旅路を振り返った。
 レンガが開き終わる。
「うわぁ〜先生みたいな黒尽くめの人もいる、ローブ羽織ってるなんていかにも魔術師です!って感じだね。先生は和服だから幾分ましかな、いかにも極道って気がするけどね」
 ハリーは笑顔で言い放つ。移動中のことをまだ根に持ってるなとシンジの頬が引きつる。
「それはないんじゃないかな……たしかに黒は好きだけど」
「じゃあ先生行きましょう」
「まずは魔導書だね」
 切替えがすごく早いなとハリーはシンジを感心しながら後に着いていく。






















 今二人が座っているのは喫茶店の中、買ったものはシンジが家まで送って手ぶらの状態だ。ハリーの肩にはリンが乗っている。どうやら気にいったようだ。
 シンジは視線を感じて、ふと隣の席に座っている少女に目がつく。魔導書など今日買ったものと同じものがテーブルの上に乗っている。
 髪は栗色でウェーブが掛かっていて肩から腰の中央ぐらいまでの長さだ。目は茶色眼、かわいい部類に入ると正直にシンジは思う。
 少女は目が合うと慌てて逸らした。
 そこでシンジは自分の容姿の異常さに思い至った、銀髪紅眼アルビノ黒和服は珍しいと。初めてハリーに声を掛けたのと同様になんとなく少女にシンジは話しかけた。
「君も今年、学校入学するの?」
 シンジが話しかけたほうにハリーも振り向く。
「はい、そうです」
 少し驚いた様子だがが返事はすぐに返ってきた。
「そう、じゃあうちのと同じだね」
 シンジはそう言いながらテーブルの向かいに座っているハリーを指差す。少女は指差されたほうを見つめ、ハリーは目が合うと気恥ずかしさから目を逸らした。
「名前はなんといいますか?それにお二人は兄弟ですか?失礼ですが似ていませんけど」
 少女は普通に疑問に思ったのだろう。ただの友達が一緒に来るとは思えないし、余りに似ていなかったから。
「僕は碇シンジ、で、こっちがハリー・ポッター、そして肩に乗っている白猫がリンだよ。ハリーは弟であり息子であり弟子であるってとこかな」
「息子……先生の息子……やっぱり兄みたいな先生だよ」
 シンジの答えにハリーは少し直した。
「君の名前は?」
 今度はハリーが尋ねた。
「ハーマイオニー・グレンジャー、両親は魔法使いでない普通の人よ、ハーマイオニーでいいわ」
 ハーマイオニーの口調が少しくだけてきた。緊張していたのだろう。
「じゃあ、僕もハリーでいいよ」
「僕もシンジでいいよ」
「シンジさんも魔法使いなんですか?」
 ホグワーツ魔法学校に入学するハリーに先生と呼ばれているのでそう思ったのだろう。
「いや、魔法使いじゃないよ、魔術師さ。ついでにハリーも魔術師だよ」
 シンジについては魔術師というより『世界の管理者』というものだが、理解しがたいと思い、あえて言うことはしなかった。
魔術師?魔法使いとはどう違うの?それか奇術士の類い?」
 ハーマイオニーは買ったばかりの魔導書をシンジたちに会う前に少し読んでいたが、魔術師についての記述はなかったのだ。
「奇術師とは違うよ、なんていうのかな、この『世界』の魔法の認識の仕方と僕らは違うんだよね」
その後シンジは魔術と魔法の違いをハーマイオニーに語った。




「そうなんですか、たしかにそちらのほうが納得しますね」
 シンジはハーマイオニーを理解力があり頭が柔らかく、秀才になりそうだなと感じた。
「ハーマイオニーの両親は今何してるの?」
 ハリーがコーラを飲み終わり話しかけた。
珍しいからといろいろまわってるわ、人は、マグルは普通ここに来れないから」
「そうだね、初めて見るのがたくさんあったし、けどこのぐらい珍しいのは先生の部屋のほうがいろいろあったし、僕はまわるのはいいや」
ハリーは入る度に変わるシンジの部屋を思いだしながら、横を通った店員にコーラをもう一杯頼んだ。
「ハリーはマグル出身の私を蔑むように思わないの?」
 ハーマイオニーは両親と買物していたときに時々刺さる軽蔑の感情を感じていて、シンジとハリーの普通の対応に好ましく思いながら疑問に思ったのだ。
 そんな視線を無視、いや、感じてない両親を少しすごいとも思ってもいる。
「なんで?」
 ハリーにはどうしてそんなことを言うのか分からなかった。
「えっ、なんでって言われても、私マグル出身よ」
 ハリーの答えに驚きながら改めて言う。しかしハリーにとっては余計に分けが分からなかった。よって
「どうでもいいじゃん、そんなこと」
 ハリーの単純な答えにシンジが続ける。
「マグルだろうが魔術師の家系だろうがそんなことは関係ないんだよ、それに上下はないんだし、魔術師の質はそのもののポテンシャルと探求心しだいだよ」  シンジとハリー、ハーマイオニーはその後ハーマイオニーの両親が来るまで楽しい雑談を続けていった。
お茶会絵 双葉






















 帰りは日本までデュラックの海をもちいて帰ってきた。ハリーはこのほうが断然楽だと言ってたが、二週間の移動も楽しかったというのは黙っていた。なんとなく恥ずかしいのだ。
「ハーマイオニーと同じ寮になれるといいね」
 風呂からあがったシンジは素直にそう思いながらハリーに話しかけた。
「そうですね、僕でも親友になれそうな気がします、じゃあ、おやすみなさい」
 そう言い終わりハリーは自分の部屋に向かっていった。疲れたので久しぶりの自分のベットで早く寝たかったのだ。
 シンジはハリーを見送りこの後のことについて考えていった。






















 シンジとハリーは9 3/4番号線の蒸気機関車に乗り込んでいった。
「先生はどうして乗るんですか?」
 ハリーはシンジが一緒に行くと言ってから何度も繰り返した疑問を続けた。
「ふふっ秘密だよ」
 口許を吊り上げて、ニヤリとしながらシンジは答えた。ハリーはそれを見る度ビクッとする。この微笑みだけは慣れることはできないなと思うのだ。
 まぁ先生が来るのを嫌に思わないから別にいいが、やっぱりその黒和服は目立つなと思い早く座席を探していった。白猫を肩に乗せてるのも珍しいのだが。
シンジは後から着いてくる。けれどどれも人が座っていて空いてない、仕方なくハリーは一人で座っている赤毛でそばかすのある蒼眼の少年に相席を頼んだ。
「あの、ここ座っていいかな?」
「ん、いいよ」
赤毛の少年が振り向く。
「失礼しまーす」
 続いてシンジが入ってくる。
「すごい人だね、全然席が空いてなかったよ。君の名前は?」
 シンジが懐から扇子を取り出し扇いでる。
「ロナルド・ウィーズリー、ロンでいいです」
「僕は碇シンジ、シンジでいいよ」
「僕はハリー・ポッター、ハリーでいいよ」
 シンジの紹介にハリーが続く、ハリーが名乗り終わったらロンの表情が驚きのに変わる。
「君があのハリー・ポッター!?よければ傷跡見せてもらえないかな?」
「いいよ」
 そういいながらハリーは髪を掻き上げて額の痕を見せる。
「わぁ、本物だぁ、あのハリー・ポッターだ」
 その言葉にハリーは苦笑する。そしてハリーはシンジが痕を見せたとき、一瞬顔をしかめたのに気付けなかった。
「あ、ロンは弁当食べる?先生が作ってくれたもので日本食だけど」
 ハリーは荷物から重箱を取り出す。
「先生?」
 場違いな言葉にロンは疑問に思った。
「先生ってのはシンジのこと、兄であり師匠であるから先生なんだ」
 そういいながら重箱の蓋を開ける。
「そうなんだ。あ、おいしそう」
 重箱から零れる匂いにロンはそう思った。
「食べてみな、たくさんあるし、初めて食べたとしても味は保証するよ」
 シンジは笑顔で一番につまみながら言った。
あれ?」
 ハリーは歩いている少女に顔を向ける。それにシンジも気付いた。
「ハーマイオニー!」
 シンジは大きな声で呼び掛けた。ピクッと肩が動いてその後視線が集まっているのに気がついたのか、気恥ずかしながらこっちにとことこ髪を揺らしながら寄ってくる。
「シンジさん!大きな声でなくても聞こえるから静かに呼び掛けて下さい!」
 ハーマイオニーはジト目と言葉でシンジを責めている。ハリーはそんなに声上げてたら目立つのになぁと思ったが別に問題ないなと言わなかった。代わりに
「ハーマイオニー、これ食べる?先生手製の弁当だよ」
 ハリーは、ほいっと重箱の一つを差出ながら尋ねる。
 ハーマイオニーは何か言いたげだったが、結局摘みながら席に座いる。
「改めて久しぶり、ハーマイオニー」
「久しぶり〜元気してた?」
 ハリーとシンジはそろぞれ三週間ぶりに会ったのに軽い挨拶だった。
「ええ、久しぶり、シンジさんとハリー。この機関車に乗っていると思って探したわ、学校入学前からの友達ですもの」
 シンジとハリーはハーマイオニーとはあのときの一回しか会っていなかったが、数回電話で話していた。魔導書に書かれていることについての話題が多かったのはさすがハーマイオニーである。
「こちらは誰ですか?」
 ハーマイオニーはロンのほうを向きながら尋ねた。
「さっき知り合ったロナルド・ウィーズリーだよ。ロン、こっちはハーマイオニー・グレンジャー」
 ハリーが互いを紹介する。
「よろしく、ロンでいいよ」
「私もハーマイオニーでいいわ」
 その後は弁当を囲みながら賑やかな話が続いてく。しかし、なぜここにシンジがいるかは教えてもらえなかった。






















 機関車が目的地に着く
「じゃあ、僕は行くとこあるから」
 シンジはあっという間に去っていく。
「ほんとにどうして来たのかしら」
「『外れ』ているのは、いつものことだから気にしなくていいんじゃない。それに後で絶対教えてくれるし」
 『外れ』ているということについて、二人ともあまり気にしなかった。
「まぁまずは学校へ行こう、それと同じ寮になれるといいね」
『うん』
 二人の笑顔と声が揃った。






















 ダンブルドア校長室、蒼色の三角ぼうしを被り、髪、髭、顎鬚白く染まっており老人のようだ、眼鏡を掛けており優しそうな顔立ちをしている。
 椅子の後ろに黒い影が染みだし消えると、そこに黒和服の少年が現れた。
 少年は張っていた結界を解く。これは障壁で防ぐのではなく、認識させないというものだ。ある人形師のを参考にした結界である。
 ダンブルドアは結界を解かれたと同時に、近距離転移で部屋の端に向き合う形で現れる。それに続き障壁の展開、詠唱に有した時間は0.5秒さすがに衰えてはいるがまあまあのできである。やっと話しかけた。
「誰じゃ」
 疑問形ではない、言葉の裏に言霊を乗せての魔術、いや、この『世界』での魔法である。
「碇シンジです。ハリーの保護者で師匠です。」
 ダンブルドアの言霊の影響はない、シンジの意思で答えた。
「君が……確認はしている。用件はなんだ」
「ハリーは今だに運命に縛られています。それで−−−」



   「これは頼みではありません。命令です。」




 シンジの威圧が高まった。殺気ではない、『絶対の意志』である。






















 ハリーは組み分け帽子に言われたウ゛ォルデモートがいたスリザリン、両親がいたグリフィンドール。その両方でやっていけると言われ、どうしてそのように言われるのだろうと悩んでいた。
 しかし、これは答えを知りたいが知るのが怖いという思いもあり、いつもならシンジに相談するのだができなかった。
 救いはグリフィンドールになり、ハーマイオニーとロンと一緒の寮になれたことである。
 今ハリーたちは寮監督者のマクゴナガルによってグリフィンドール生には皆に話があると呼ばれ寮内の談話室に向かったところだ。
 悩んでいる間に着いたらしい。途中二人に心配されて、やはり友達は大切だと思い至った。
「皆さんに紹介する人がいます。副寮監督者の碇シンジ先生です」
 女傑と呼ばれそうなすこし厳しい感じがするマクゴナガルの後ろから笑顔でシンジが現れた。
「どーもよろしく〜副寮監督者の碇シンジです」



『ああー!!』




 三人の声が揃い、その後に集まった皆の視線が恥ずかしかった。




第一章 四人の出会い 終幕










あとがき

 シンジ君が万能ではないけど強くなってさまざまな世界を旅するという作品を割と見かけます。そして誰もがやっていないだろうなと思ったハリー・ポッターとクロスオーバーしてみました。幼少期が似てるなぁと思ったのがきっかけです。
 このの作品は『typemoon』さんの『月姫』の世界観を混ぜ、『月姫研究室』を参考に書いています。文章配置は『泉蓬寺学園』の泉蓬寺悠さんの作品を参考にしています。

[書庫] [第二章]



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