死して尚続く家族(ひと)の絆








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 一面を桜が覆っている。私が中学校に上がる前に連れて来たかったんだ、とア キトが言っていた。アキトとユリカに連れて来てもらって、本当に良かった。舞 い降りる桜の花びらが粉雪みたいに綺麗だ。

 アキトとユリカは既に公園の出口付近に行っている。が、私は立ち止まって一 つの大きな桜の木を見上げた。

 力強く大地に根付いて私と同じ髪の色の花を咲かせている。



 すごく小さいが、私には感じられるものがある。実はルリと繋がったラインは、まだ微弱 にだが生きているのだ。

 ルリは意識などないし魂なんてない。完全に拡散してしまって、もう集まって 形を成すことはできないけど、一方的に送ることはできる。

 ルリが言っていた『幸せ』。私が感じた幸せをカケラでもいいから、私はルリ に送っている。ルリがどこに漂っているかなんて解らない。『世界中』にいるの かしれないし、どこにもいないのかもしれない。
 けれど。
 私はルリに送り続けている。アキトとユリカと私の幸せを。



「ラピス、帰るよ」

「ラピスちゃん、早くおいで〜」

 柔らかな声がここまで届き、振り返ったら黒髪の青年と蒼髪の女性が手を振っ ていた。アキトとユリカだ。

「判った。アキト、ユリカ」



 私は駆けだして二人の下に向かった。

 私たちは続いていく。
 いつまでも途切れない家族の絆で結ばれて。







死して尚続く家族の絆 終幕









あとがき


 『死して尚続く家族の絆』完結です。

 どうだったでしょうか。私は書いてて面白かったです。
 初めての一人称だ、と書き始めたこの物語。けど三人称の方が私は得意だと再 確認しました。回想と体験の二段構造で、いつもなら20kbから25kbぐらいで書いていたのですが、一話を短く書いてました。楽をしていたんです(笑)

 中編の物語なんですが、実はこの物語、短編で書こうと思っていたんです。け れど語り部は一人だけでの予定じゃなかったし、間と間の時間経過がとても長か ったのでこういう形式をとりました。こちらの方でよかったと思います。




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