死して尚続く家族(ひと)の絆








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「初めまして」

 真っ暗闇の此の世界で、私の目の前に、私と同じ色の瞳を持つ女性が立ってい る。
 否。女性と言うよりも少女と言うのだろう。私は自らの常識の欠陥を自覚して いるから、私の認識する形と世界の認識する形がずれている事を知っている。
 女性か少女かとは、人が容姿や雰囲気で区別するものだと思う。日々変化する 生活を時間という概念を用いて、単位として数え、記録して、年齢によって区別 出来る。だから。

 彼女は少女なのだろう。私より二つか三つ、年齢が高く見える。

「あなたに、頼みがあるんです」

 少女の蒼みがかった銀色の髪が揺れている。私と同じ色の瞳は濡れているよう に見えたが、それよりも、瞳の奥に秘められている光が強い。決意した瞳だ。

「私を、受け取って下さい」

 私は眉を顰めた。そんなことをしては良いのか。だって彼女は。そんなことを しては彼女は。

「あの人のために」

 真摯な視線に胸を穿かれた。そんな瞳で。そんな言葉を言われたら――。

 その言葉で私の思いは決まった。
 私の存在は彼のためにあるから。
 この命は、彼のためにあるから。
 すべては、彼のためにあるから。

 だから。
 彼女があの人に尽くすと言うのなら、私には拒否する権利はない。否。拒否す る思いもない。あの人のためならば、私がすることはそれを手助けするだけであ る。あの人のために何か出来るのなら、私は何でもする。
 故に、首肯いた。

 蒼銀色の髪を揺らす少女は、表情を和らげると柔らかな微笑みで、ありがとう 、と私に言った。









0/ 終幕









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